(42)戦士

ウトガルド城跡での夜を徹した死闘を終え、合流を果たした104期たち。
ユミルが巨人化能力を持っていたこと、クリスタが実はヒストリアという名であったことが明らかになりました。

今号はそれら激変する状況が終息し、つかの間の安堵を得た事後整理の場面から始まります。

 


進撃の巨人 第42話 戦士

(別冊少年マガジン2013年3月号掲載 2/9発売)

 

巨人化し、城に群がる巨人たちと血みどろの戦いを演じたユミル。
一命はとりとめましたが、右の手足を欠損、内臓は「スクランブルエッグにされちまった」状態のようです。

出血は止まったものの体からは蒸気が出続け昏睡状態。
いずれにせよ詳しい話が聞ける様子ではありません。
ユミルから情報を引き出すにはまずトロスト区で治療を受けさせる必要があるとハンジは判断します。

ユミルが巨人として敵対的に扱われることを危惧したクリスタは、ハンジに必死の助命嘆願。
彼女がいかに危険を顧みず身を呈して自分たちを救ってくれたかを熱弁し、
巨人化能力を隠していたのはその身に危険が及ぶからだと弁護。

ハンジも至って冷静にそれを受け止め、ユミルとは友好的でありたいと吐露します。
クリスタの本名がヒストリア・レイスであると聞いたハンジは、レイスの名に覚えがありました。

「レイスって あの貴族の?」
「・・・はい」
「・・・そう よろしくね ヒストリア」

クリスタの実家は王家や神官といった特別な役職をもった家ではなく、
少なくとも表向きは単なるいち貴族として認知されているようですね。

 

✕✕✕

 

壁の上で座り込み疲労感をにじませるライナー。
昨夜の戦いで巨人に噛み砕かれた右腕が痛むようです。
いつ死んでもおかしくない状況に心が削られるようだと、彼にしては珍しく弱音を吐きます。

そんなライナーを励まそうと、普段無口なベルトルトが声をかけました。

「そうだよ・・・ライナー 故郷だ! 帰ろう! もう帰れるじゃないか
今まで苦労してきたことに比べれば 後少しのことだよ」

それを聞いたライナーも思い出したように
「そうか・・・ 後もう一息の所まで来ているんだったな」

意味深な会話。
横でやり取りを聞いていたエレンは意味がわからないといった体。
そこへ壁の調査を終えたハンネスが報告に来ました。

 

✕✕✕

 

報告はナナバやゲルガーらの出したものと同じ、「壁には穴がない」。
少なくとも巨人が襲来した南西の方角には異常なしとのこと。

調査兵団に動揺が走りますが、
ハンジは一旦トロスト区へ帰投して情報を集める判断をします。

わけがわからず不安と焦りの色が出るエレンやアルミンですが、
そこへライナーがエレンに「話がある」と切り出します・・・

 

✕✕✕

 

調査兵団の皆から少しだけ離れた壁の上で、
エレンとベルトルトに向けてライナーがあくまで淡々と、軽い世間話のように伝えます。

「俺達は5年前・・・壁を破壊して人類への攻撃を始めた
俺が鎧の巨人で こいつが超大型巨人ってやつだ」

あまりにも唐突な発言。読者と同じく動揺するエレンとベルトルト。
ライナーは構わず続けます。

「俺達の目的は この人類全てに消えてもらうことだったんだ
だが・・・ そうする必要はなくなった・・・
エレン・・・お前が俺たちと一緒に来てくれるなら
俺達はもう壁を壊したりしなくていいんだ わかるだろ?」

 

なるほど、わかりません。

 

「だから俺達と一緒に来てくれって言ってんだよ
急な話ですまんが 今からだ」

「今から!? どこに行くんだよ??」

「そりゃ言えん・・・ だが・・・まぁ 俺達の故郷ってやつだな
で? どうなんだよエレン 悪い話じゃないだろ
ひとまず危機が去るんだからな」

 

✕✕✕

 

場面は昨夜、トロスト区を出発する前のエレンやハンジらに移ります。

話題はアニの身辺調査の結果。
104期にはアニと同郷の人間がいることが判明し、それがライナーとベルトルト。

彼らは女型の巨人が襲ってきた壁外調査の際、
「エレンは陣形右翼にいる」という偽情報を知らされていた。
そしてエレンを狙う女型の巨人は右翼側へ出現した。
この線から一応3人の関係について聞いておきたいというのがハンジの考え。

エレンとアルミンは3人が特に親密だった印象はなく疑いは低いと否定しますが、
アルミンは女型の巨人とライナーが交戦した時のことを思い出し、ある違和感に気づきます。

ライナーが陣形内でのエレンの居場所を気にしていたこと、
女型の巨人がライナーを捕まえ、指を切り飛ばされたあと手の平を凝視し、
その後すぐにエレンがいる方向へ向かって走りだしたこと・・・

手の平に刃で文字を刻み、エレンの居場所を伝えることが
ライナーにならできたかもしれないと、アルミンは考えます。

証拠はなく、推量でしかありません。
それでももし彼らが共謀者でつながっているなら・・・

 

✕✕✕

 

再びエレン・ライナー・ベルトルト。
エレンはライナーに、疲れておかしくなってるんだろうから街へ戻ろうと声をかけます。

 

 

ライナーは自嘲とも泣き顔ともつかない表情でどうかしてたと心中を独白し
折れた腕を吊っていた三角巾(クリスタのスカート?)を首から外すと、
戦士として最後まで責任を果たすと言って折れた腕から蒸気を立ち上らせます。

それまで黙っていたベルトルト。
「ライナー やるんだな!? 今・・・! ここで!」

「ああ!! 勝負は今! ここで決める!!」

 

そう言ってエレンへ向け一歩踏み出した瞬間、


飛び込んできたミカサの白刃がライナーの右腕を肘から斬り飛ばし、
首をガードした左手も深くえぐり取ります。

返す刀でベルトルトの首も狙いますが浅く、両者への致命傷とはなっていません。
巨人を殺すことには超一流ですが、対人での詰めの甘さを露呈したミカサ。
倒れこむベルトルトに止めをさそうとするも、ライナーのタックルに阻まれ壁から転落。
アンカーワイヤーがあるので死にはしませんが、この隙が勝敗を分けます。

ライナーとベルトルトはこれまでにない目でエレンを睨みつけると、ともに巨人へ変身。
鎧の巨人と・・・本作の看板、超大型巨人です・・・

 

ユミルといいベルトルトといい、
これまで存在感が薄かったキャラが一気に重要人物となったせいで
物語を最初から読み直したくなりますね。

超大型は上半身しか出現しておらず、肋骨が壁に食い込んで穴を開けています。
タンカに横たわるユミルを捕まえたベルトルト。

鎧の巨人はエレンを捕まえ、一気に壁から滑り降りて脱出を図りますが・・・
ライナーは忘れているのでしょうか?エレンも自らの意志で巨人化できることを。

エレンの脳裏をよぎったのは、訓練時代の宿舎で共に笑いあった思い出。
全て嘘だったのか、人類を騙していたのか、万感の思いを込めエレンは叫び、変身。

「このッ・・・ 裏切りもんがああああ」

 

2体の巨人を相手にエレンと調査兵団はどう戦うのか!?
興奮冷めやらぬまま次号へ続く。

 


メモ

・アニ、ライナー、ベルトルトは同じ勢力に属していて戸籍はでっちあげ。

・クリスタの本名はヒストリア=レイス。レイスが姓で貴族。ハンジがすぐ思い出せるくらいには有名。

・ライナー、ベルトルト、アニの関係について否定するエレンとアルミン。
一方でミカサは「覚えていません」。 3年一緒に過ごした仲間すら興味が無い。
エレン以外は本当に眼中になく、この作品で一番恐ろしい精神を持っているのはミカサだと思う。

 

・これまでに出てきた巨人はいくつかの勢力に分けられる。

【女型・超大型・鎧】

壁を破壊して人類の生活領域へ侵攻。
街の外から大小さまざまな巨人を引き連れてやってくる。
5年前、そしてつい最近と2度に渡り壁を破ったことがある。
エレンの拉致を目論んでいる。
人間としての外見と巨人化した時の外見が少し似ているという共通点がある。

アニの巨人化には「くだらない理想主義」の父親が関与していると思われる。
ライナーとベルトルトは幼い頃にユミルに酷似した巨人に襲われた記憶を持っている。
いずれも能力を獲得した経緯やエレンを狙う目的は未詳。

 

【獣】

立体機動装置を知らない点、言葉について確認している点から見て
他の巨人とつながりはなく、異文化圏から来たと思われる。
引き連れている巨人に言語で命令することができるが単体での戦闘能力は未知数。
村の人間を巨人化させている可能性が疑われるも、その目的は不明。
ウトガルド城を襲った動機もわからず、いつのまにか姿を消していた。

 

【エレン】

父であり医師のグリシャに得体のしれない注射をされてから巨人化能力を獲得したと思われる。
本人はそのことを全く知らなかったが、命の危機で本能的に覚醒することができた。
巨人化に習熟することで変身のタイミングをコントロール可能であり、
当初は不安定だったが人としての意識を保てるようになっている。
調査兵団の切り札として戦力に組み込まれている状態。

 

【ユミル】

巨人としては組織的な行動をしておらず、保身のためにしか能力を使っていない模様。
能力を獲得した背景や単身で内地に暮らしていた経緯については未詳。
他の巨人と比べると小柄で戦闘力はやや低いか。
イルゼ・ラングナーが遭遇した巨人の言う「ユミルさま」「ユミルのたみ」と関係があるはず。

 

【壁の巨人】

街を囲む壁の中には文字通り人柱として超大型に並ぶサイズの巨人が詰まっているらしい。
現在は壁の中でおとなしく活動停止中だが、日光を当てると動き出すおそれあり。
壁材は巨人の硬質化能力を応用して作られている。
壁が建造された目的、経緯についてはまだ明らかになっていない。
壁を与えた三女神(シーナ、ローゼ、マリア)は人柱になった巨人の名かもしれない。

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