(38)ウトガルド城

第38話 ウトガルド城

 

コニーの村で

巨人に襲撃され、壊滅したコニーの村。

今号は絶望に打ちひしがれるコニーの後ろ姿からスタートです。

 

不思議なのは、犠牲者の死体がどこにもないこと。

巨人に村を襲われて痕跡が残らないなんてことはありえないはずです。

 

巨人を早期に発見し、全員無事に逃げたんだと推測する隊員の意見にコニーは元気づけられますが、班長は懐疑的です。

家屋が徹底的に破壊されていること、馬小屋に多くの馬がつながれたままであることから多くの住民が逃げおおせた可能性は低いと見る班長ですが、それは内心に留めたまま壁の破壊箇所特定のため出発を促します。

 

馬にまたがり村を出ようとするコニーの背に、コニーの生家を潰している動けない巨人が声をかけました。

「オ・・・アエリ・・・」

 

「お帰り」と言っているのでしょう。やはりこの巨人はコニーの母親と思われます。

前回、この巨人が動けない状態で発見された時に「一体どうやってここに来たのか?」という疑問が生じましたが、他の場所から移動してきたのではなくこの家で発生したと考えれば合点がいきます。

日常生活を営んでいた村人たちが何らかの理由で巨人化し周囲へ侵攻したと考えるべきでしょう。

変態が不完全で四肢が使えなかったコニーの母親だけはその場に取り残されたと思われます。

コニー自身、あの巨人が母親に似ていると発言していることから物語的にはほぼ間違いないでしょう。

 

ライナーもコニーの様子からその事実を察知しますが、コニーの言葉をさえぎって必死に自分たちの任務の責任を説き、自身とコニーを鼓舞します。

ひとまず冷静さを取り戻したコニー。壁の破壊箇所を探すため、生まれた村を後にします。

 

ここでは以下のようなことが推測されます。

 ・普通の人間が突如巨人化する

 ・集落単位で複数の人間が一気に巨人化する

 ・変態が不完全になる者もいる

 ・家族の顔を判別でき、人語を発することができる

 

エレンのように任意で変身する巨人との違いは、元に戻ることができない(と思われる)、行動目的を自分の論理や意思で決められないといった点でしょうか。

何者かに強制的に変態させられ、その後誘導されているように思えます。

 

 

周囲の部隊が気づく違和感

巨人出現ポイントから東で防衛ラインを引くリコの精鋭班、壁の穴を探して壁沿いに進むハンネス部隊は、巨人の数が異様に少ないことに気づいていました。

通常、巨人が壁に穴を開ける時には特殊な巨人が多くの巨人を引き連れてやってきます。そして圧倒的な物量で押し通るのが基本戦術。

しかし今回は防衛線へ押し寄せる巨人の数は少なく、また壁にそって行けども行けども新手の巨人は現れません。穴からゾロゾロと巨人が入ってきているはずなのに。

これまでの巨人侵攻とは何かが違います。

 

コニーやライナー、ベルトルトらがいる南班は日が暮れて真っ暗になった後も松明の火を頼りに壁沿いを西へ進みます。

いつ暗闇から巨人が現れるかもしれない恐怖。まさに一寸先は闇です。日光がないと巨人の活動性は鈍りますが、そうは言っても恐怖心は拭えません。

 

恐怖と緊張でおかしくなりそうな中、行く手に別の明かりが見えました。

向こうからやってきたのはクリスタやユミル(そばかす)がいる西回りの班。互いに壁の穴は発見できていません。

つまり、巨人がやってきた方向の壁には穴が開いていないということになります。

困惑する隊員たち。今日の過酷な行程で疲労も限界です。

 

そこへ雲の隙間から月明かりが差し、すぐ近くに建築物の影が見えます。

城跡のようです。

 

 

 

ウトガルド古城の中で

一息つくために古城へ向かった一行は、そこに最近まで誰かが住んでいた痕跡を確認。

わずかながら酒や食糧も残されていました。こんな壁の近くに誰が住んでいたのでしょうか?

 

壁が壊されていないなら巨人はどこから来たのか?

当然の疑問を口にするクリスタ。しかし誰にもその答えはわかりません。

 

コニーは自身の村が壊滅したが犠牲者の痕跡がなかったことを報告し、そこで生家を潰していた巨人が母親に似ていたことを思い出します。

ライナーがその先を制しようとする前に、ユミルが大声でコニーを冗談めかして笑い飛ばし、その場は流れてしまいました。

これで丸め込まれるコニーもコニーなんですが、今は情報が足りないのでいくら考えても無駄というのは確かでしょう。

 

夜も更けて、ライナーは倉庫で食糧を漁るユミルを発見します。

ライナーは先程ユミルがコニーの村の件で機転を利かせたことへ感謝を伝えたいようでした。ユミルはとぼけますが。

 

そこでユミルは缶詰を見つけます。

「こりゃいけそうだ 鰊(にしん)は好みじゃないが・・・」

 

ライナーはその缶詰を見て

「何だこの文字は? 俺には読めない」

「にしんって書いてあるのか・・・?」 「お前・・・よく・・・この文字が読めたな・・・ユミル」

ハッとした表情で視線を交わす二人。緊張が走ります。

 

どちらかが次の言葉を発する間もなく、見張りが大声を上げます。全員すぐに屋上へ来いと。

 

屋上で彼らを待っていたのは、大勢の巨人が城の敷地まで攻め入る光景でした。

エネルギー源である日光がないのになぜ・・・?

巨人たちを率いているのは、ミケと問答し立体機動装置を奪いとったあの猿巨人

流暢に人語を話す、全身に毛の生えた手長オランウータンです。

 

猿巨人は城跡には興味を示さず、そのまま歩いて壁へ近づくと素手で壁をよじ登ります。

その他の巨人は人に群がる習性に従っているのでしょうか、城へ侵入を試みており、隊員たちは応戦の構え。

猿巨人も特にそれを止めたりはせず、壁の上から背中越しに一瞥しただけ。

 

時を同じくして(※)、ハンジ率いる調査兵団の主力部隊(エレン、ミカサ、アルミンら)は壁の破壊箇所を確認するためウトガルド城の見張り塔を目指していました。

彼らの到着は間もなく。次回の舞台は激戦のウトガルド城!

つづく

 

(※)前号と今号で主力部隊の経過時間が逆転しているのですが、流れから判断して誤植と思われます。

前回、エルミハ区へ向かう途中で巨人発見から20時間後、今回エルミハ区から城跡へ向かっている時が18時間後となっています。

誤植でないとすると何かメタな仕掛けがあるのかも・・・というのは穿った見方かもしれません。

コミックスでは時間軸が全体的に修正されました。単なる誤記/誤植だったようです。

 

 

気づいたことメモ

壁に穴がないことから、やはり巨人は壁の中で出現したと考えるのが妥当と思われます。

コニーの生家の件を見るに、村人が変態して巨人になり周囲に散った可能性が高い。

そして後続や新手がいないことから巨人の出現は偶発的に起こったもので、組織的に人類領域への侵攻のために計画されたものではなさそう。

 

猿巨人は壁を破壊せずに乗り越えることができ、引き連れている巨人は夜間でも活発に行動できることから、従来の巨人とは別種である、または何らかのエネルギー供給手段を持っている可能性があります。

※猿巨人は立体機動装置と剣の仕組みを知らなかったことから、女型の巨人であるアニから情報供与を受けていないのは明らかで、巨人にも複数の勢力があると思われます。

 

ユミルはライナーが読めない文字を読めたことから、別の文化圏の教育を受けている可能性が高い。

それが例えば「王族秘伝の古代文字」のような単なる特殊技能としての位置づけなのか、そもそも別の世界(別の時代?)で教育を受けて送り込まれたエージェントなのかは分かりません。

「進撃の巨人」の世界の人類は海を知らない(壁の中に海がなく、壁の外について記した書物は禁制)ことから、ユミルが海水魚である鰊(にしん)を知っていることがそもそも不自然です。

「鰊は好みじゃないが・・・」と言っているのでユミルは実際に鰊を食べ慣れていることがわかります。壁の中とは違う生活を知っている証拠です。

ライナーの反応がいまいち明確ではないのですが、彼は「にしん」という言葉自体を初めて聞いたようにも見えます。

 

またここで問題になるのは、読めない文字でラベルが書かれた酒や海水魚の缶詰を誰がここへ持ち込んだのか?という点です。

壁の中の人類とは別の文化圏の何者か、ということになりますね。目的は? どこから来てどこへ消えたのか?

カタカナを反転したような文字。単行本の表紙カバーを外すと似たような文字が書かれているが・・・

 

ストーリーの根幹となる仕掛けが時間軸を移動する「縦の形」なのか、世界の認識を「横」に広げるタイプ(実は壁は隔離実験場で、人類の大多数は離れたところで現代的に暮らしているなど)なのか、謎への興味は尽きません。

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