(1)二千年後の君へ

「いってらっしゃい」「エレン」

進撃の巨人の本編はエレンが夢の中でみた少女の言葉で幕を開けます。

夢の中での少女は顎くらいのボブカットでしたが、目覚めたエレンの前にいたのは肩よりも伸びたセミロングの少女。

二人で薪ひろいに来ていたようです。彼女の名はミカサ。

 

「ミカサ・・・お前・・・」「髪が伸びてないか・・・?」

夢と現実の境があやふやなエレン。

「すっげー長い夢を見ていた気がするんだけど・・・」と訝る彼を見てミカサが一言。

「どうして泣いてるの?」エレンは無自覚に両目から頬を伝う涙を流していました。

この夢は一体どんな伏線なのでしょうか?

 

黒バックに「845」の文字。最初はなんのことかわかりませんでしたが、作中で「845年」という暦のことでした。

 

エレンとミカサは帰宅途中に門番の兵士ハンネスさんが勤務中に酒盛りしているのを発見。

巨人が攻めてきたら戦えるのかと激しく叱責しますが、ハンネスと仲間たちは意に介さず、エレンに対して説明パート。

・100年間巨人が攻めてきたことは一度もない

・壁は50mの高さがあり、巨人がどうこうできるとは思えない

・危険を冒して外に行こうとする「調査兵団」はバカ

どう見ても前振りとしか思えない能書きを垂れる兵士A、「こいつ多分死ぬな」と直感するのに十分な貫禄でした。

 

「一生壁の中から出られなくても・・・メシ食って寝てりゃ生きていけるよ・・・」

「でも・・・それじゃ・・・まるで家畜じゃないか・・・」

エレンの純粋な言葉でしたが大人は呆れ顔。この世界ではこういった価値観は異端、あるいはガキの戯言といった扱いのようです。

 

そこへ話題に出たばかりの調査兵団が凱旋してきました。英雄の凱旋だと多くの人が見物に詰めかけますが、そこから見えたのは満身創痍で意気消沈した敗残兵の列。皆一様に目がうつろで「ザ・死相」といった面持ちです。

解説役の街の住人Aが言うには100人出ていって帰ってきたのは20人もいないとか。

 

そこへ兵士の母親が駆け寄り息子の安否を問いますが、差し出されたのは人間の右腕が入った袋。

残りは巨人に食われてしまったようです。悲しみのあまり泣き叫ぶ母親。息子の死は人類の役に立ったのですよねと、指揮官に詰め寄ります。

 

「もちろん―!・・・イヤ・・・」「今回の調査で・・・我々は今回も・・・」

「何の成果も!!得られませんでした!!」

「私が無能なばかりに・・・!ただいたずらに兵士を死なせ・・・!」

「ヤツらの正体を・・・!突き止めることができませんでした!!」

犠牲となった兵士の遺族に責任者がこんなことを言う軍隊ってぶっ飛んでますよね~。

出兵自体が金と人員の無駄でしたって言ってるようなもんです。スポンサーの手前、公の場で言っていい言葉ではないですが、それゆえにショッキングで作品の世界にグッと惹きこまれます。

 

これが普通の少年漫画であれば、倒した巨人の首なんかを誇らしげに運ぶ荷馬車と超有名な美形の隊長が出てきて、主人公が「スゲー!俺もいつかあの人みたいに・・・!」という憧れを抱くシーンですよね。あっさりと少年の夢を打ち砕く絶望感。進撃の巨人さすがです。

 

しかしエレンは諦めません。諦めたらこの漫画が終わってしまいます。両親の反対にも「ここで誰も続く人がいなかったら、今までに死んだ人たちの命が無駄になる!」と抵抗します。損切りできずに破産する素人トレーダーと全く同じ心理ですね!負けを取り返そうとして余計に負ける、ギャンブラーは必ず破滅するようにできているんですが、エレンの父親はその辺をガツンと諭してくれるのでしょうか?注目の発言は・・・

 

「そうか・・・船の時間だ、そろそろ行くよ」

ヘタレ親父でした。

思春期の息子と真面目に向きあおうとしません。これじゃ碇ゲンドウ&シンジと同じく、不器用過ぎる親子になってしまいます。母親のカルラは当然怒りますが、「人間の探究心とは誰かに言われて抑えられるものではないよ」となんかかっこいい風に語って誤魔化しました。放任主義ですねえ。それで終わりかと思ったら

「エレン、帰ったら・・・ずっと秘密にしていた地下室を・・・見せてやろう」

チャリっと首にかけた鍵を見せます。なんだ?エロ本の倉庫か?

家を後にする父親の後ろ姿、「あ、これは帰ってこないな」と直感するのに十分です。きっとこの鍵は父親とともに行方不明になるのでしょうね。

母親は調査兵団なんてダメよと念押ししますが、今のエレンは尖ったナイフ。押さえつければ押さえつけるほど反発して意地になります。

 

場面変わって街の路地裏、一人の少年がいじめられています。

牛乳を絞ったゾウキンを机に入れるとかの陰湿ないじめではなく、拳で実力を行使する分かりやすいタイプのいじめです。

少年はお利口さんだけど力が弱い、ハカセタイプのキャラでしょうか。理屈で勝てないと分かったいじめっこ3人組は「うるせえぞ!」とさらに殴ろうとします。ジャイアン並の短絡さ加減です。

 

そこを通りかかったエレンは鬼の形相で止めに入りますが、いじめっこ3人組もやる気満々。「あの野郎今日こそぶちのめすぞ!」と身構えて臨戦態勢です。

が、エレンの後ろにミカサの姿を認めると「だ、駄目だミカサがいるぞ!」と半べそかいて脱兎のごとく逃げ出しました。怖がり方が異常です。ミカサとは一体何者なんでしょうか。

助けられた少年も、いじめっこ達はミカサを見て逃げたんだと理解しているようです。

 

彼の名はアルミン。いじめられていた理由は「外の世界に行くべきだ」と主張したから。エレンと同じ異端児です。「王政府」の方針として外の世界に興味を持つこと自体がタブーとされ、そのように教育されているらしいのですが・・・ではなぜ「調査兵団」などという外部との接触を目的とする組織が存在し、それが公になっているのでしょうか?

 

「100年壁が壊されなかったからといって、今日壊されない保証なんかどこにもないのに・・・」唐突にアルミン先生の講釈が始まったと同時に、ものすごい地響きが起こり、空気がビリビリと震えます。見回すと、壁の向こうから立ち上る黒煙。明らかに異常事態です。

 

そして壁の上部に、巨大な「手」が!

直後に50mの高さの壁の向こうから、巨人がニュッと顔を出しました。ちょっと掴んだだけで壁にはヒビが入ってます。

巨人は右足を大きく後ろへ引き、そして思いっきり壁を蹴ります。裸足で!タンスの角を想像してうわ~ってなりましたが、きっと足の材質が違うのでしょう。一発で壁を蹴破って穴が開き、そこをめがけて大小の巨人が群れをなして近寄っていきます。

 

その日人類は思い出した

ヤツらに支配されていた恐怖を

鳥籠の中に囚われていた屈辱を・・・

 

いきなり巨人から攻めてくるという予想外の展開です。ここで果たしてどのような防衛戦が繰り広げられるのでしょうか?

そして気になるのが「二千年後の君へ」というタイトルの意味です。

作中で時系列が関係したのは「845」という年号と、100年間巨人は襲ってきていないという記録です。一体、いつから見て二千年後なのか?

読者の生きる西暦2000年代から見た未来の地球なのか?冒頭にエレンが見た長い夢が関係しているのか?

この辺りは記憶に留めておきたいところですね。

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